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名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)460号 判決

主文

被告は原告のために、名古屋市中区栄五丁目一一一五番宅地二七四・四一平方米の所有権移転登記手続をなせ。

被告は原告に対し右土地を明渡せ。

被告は原告に対し金五八万九四三一円およびこれに対する昭和四五年三月一一日以降右支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告において金二〇万円の担保を供するときは、主文第三項に限り仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し名古屋市中区栄五丁目一一一五番宅地二七四・四一平方米の所有権移転登記手続をなし、且つ右土地を明渡し、本件訴状送達の翌日から右土地明渡ずみに至るまで、一ケ月金五万円の割合による金員を支払え。被告は原告に対し金五八万九四三一円およびこれに対する本件訴状送達の翌日より右支払ずみに至るまで、年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」との判決並びに土地明渡および金員支払の部分につき仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

一、原告は別紙第一目録一記載の山林を所有していたところ、昭和二七年三月一二日名古屋市の土地区画整理事業において、右土地に対し同目録二記載の仮使用地が指定せられ、その後昭和三〇年三月四日付で右仮使用地がそのまま仮換地に指定された。

二、原告は昭和三一年五月二五日訴外株式会社菊花堂本店に対し、右仮換地の権利を三・三平方米当り金一九、〇〇〇円の割合で、代金合計金一、七三三、七五〇円で売渡し、翌二六日別紙第一目録一記載の山林について、右訴外会社のために所有権移転登記をした。

三、被告は昭和四二年五月二六日右訴外会社より右第一目録二記載の仮換地に対する権利を譲受け、同月二九日右第一目録一記載の山林につき所有権移転登記を経由した。

四、ところが名古屋市は昭和四四年二月二七日別紙第一目録一記載の山林を二つのブロツクに分けて、各ブロツクに対しそれぞれ新しく仮換地を指定する計画を樹てた。そこで名古屋市は先ず、別紙第一目録一記載の(四)の土地を別紙第二目録一記載の(四)の土地と別紙第三目録一記載の(一)の土地の二筆に分筆し、更に別紙第一目録一記載の(五)の土地を別紙第二目録一記載の(五)の土地と別紙第三目録一記載の(二)の土地とに分筆した。そして別紙第一目録一の土地を二つに分けた第一ブロツクに当る別紙第二目録一記載の土地に対し同目録二記載の仮換地を指定し、同第二ブロツクに当る別紙第三目録一記載の土地に対し同目録二記載の仮換地を指定した。

右仮換地は昭和四四年九月九日換地処分により、それぞれ別紙第二目録三および別紙第三目録三記載の換地となつた。そしていずれも被告名義に所有権取得登記がなされた。

五、原告が訴外株式会社菊花堂本店に売却したのは別紙第一目録二記載の仮換地であり、現在これに相当するものは別紙第三目録三記載の換地である。従つて被告の所有となるものは右第三目録三記載の換地のみであつて、別紙第二目録三記載の換地は原告の所有となるべきものである。よつて原告は被告に対し右第二目録三記載の土地につき所有権移転登記手続を求める。

六、被告は右第二目録三記載の土地を占有し、原告に対し一ケ月金五万円の割合による損害を加えているから、被告に対し右土地の明渡を求め、且つ本件訴状送達の翌日より右土地明渡ずみに至るまで、一ケ月金五万円の割合による金員の支払を求める。

七、被告は昭和四四年九月九日前記換地処分に当り、別紙第二目録一記載の土地に対する清算金として金一〇万一五四六円、別紙第三目録一記載の土地に対する清算金として金四八万七八八五円、合計金五八万九四三一円を名古屋市より受領した。然しこれは従前の土地の所有者である原告が受取るべきものであるから、被告に対し右金五八万九四三一円およびこれに対する本件訴状送達の翌日より右支払ずみに至るまで、年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

と述べた。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、

一、別紙第一目録一記載の山林が原告の所有であつたこと、および右土地に対し同目録二記載の仮使用地が指定されたことは不知、原告が右第一目録一記載の山林(仮換地ではない)を訴外株式会社菊花堂本店へ売渡したこと、被告が右訴外会社から右山林を買受けたこと、および右山林に関し原告主張の如く仮換地の変更があり、又清算金が交付されたことは、いずれも認める。

二、土地区画整理中の土地の売買は従前の土地の売買であつて、仮換地の売買ではない。従つて原告は別紙第一目録一記載の山林の所有権を右株式会社菊花堂本店へ売渡したものであり、そして被告は右山林の所有権を右訴外会社から買受けたものであるから、右山林に対して与えられた換地および清算金はすべて右山林の所有者であつた被告の所有となるものである。

と述べた。

(証拠関係)(省略)

(別紙)

第一目録

一、従前の土地(分割前の土地)

(一) 名古屋市千種区田代町字鹿子殿一一三番の一

山林   一二九九平方米

(二) 右同所同番の三

山林    五三五平方米

(三) 右同所同番の八

山林    八三九平方米

(四) 右同所同番の五

山林   一一七六平方米

(五) 右同所同番の一一

山林   六二二四平方米

二、仮換地(本件で実質上売買の客体となつた土地)

中四工区四B六番の一

三〇一・六五平方米(九一・二五坪)

第二目録

一、従前の土地(分割した後の第一ブロツク)

(一) 名古屋市千種区田代町字鹿子殿一一三番の一

山林   一二九九平方米

(二) 右同所同番の三

山林    五三五平方米

(三) 右同所同番の八

山林    八三九平方米

(四) 右同所同番の二〇

山林    三〇七平方米

(五) 右同所同番の一九

山林   一三一五平方米

二、仮換地

中四工区二〇Bブロツク七番

宅地   二七四・四一平方米(八三・〇一坪)

三、換地(本件訴訟の目的となつている土地)

名古屋市中区栄五丁目一一一五番

宅地   二七四・四一平方米

第三目録

一、従前の土地(分割した後の第二ブロツク)

(一) 名古屋市千種区鹿子殿一一三番の五

山林    八六九平方米

(二) 右同所同番の一一

山林   四九〇九平方米

二、仮換地

中四工区四Bブロツク六の一

宅地   三〇二・九七平方米(九一・六五坪)

三、換地(被告の所有地)

名古屋市中区栄四丁目一一一二番

宅地   三〇二・九七平方米

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